2022年10月より最低賃金が順次改定されます。
最低賃金は毎年地方ごとに検討されますが、今回は過去最高額の全国平均時給31円の引き上げとなりました。
その背景や企業が対応すべきこと・個人が確認すべきことを解説します。
最低賃金の確認の仕方や、給与が最低賃金額以上となっているかどうか確認する方法も紹介します。



最低賃金について

そもそも最低賃金とは何か、どのようにして決められるのかを説明します。

最低賃金とは

最低賃金とは国が定めたもので、雇用主が従業員に支払わなければならないとする最低限の時給のことです。
万が一、最低賃金より低い給料で雇用している場合には、雇用主に罰金が科せられます。従業員側でも、自分の給与が最低賃金以上となっているかどうか、しっかり確認しておく必要があります。

2種類の最低賃金

最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」があります。
地域別最低賃金とは、都道府県別に設定された最低賃金のこと。そして特定(産業別)最低賃金とは、特定の職種によって決められている最低賃金で、これも都道府県別に細かく設定されています。
特定(産業別)最低賃金の詳細は、厚生労働省のHPで確認してみてください。

特定の職種に当てはまる場合には、地域別最低賃金・特定(産業別)最低賃金のどちらか金額の高い方が最低賃金となります。

最低賃金はどうやって決まる?

毎年改訂される最低賃金ですが、一体、誰がどのように決めているのでしょうか?
「中央最低賃金審議会」という組織があり、全国の実態調査をもとにして最低賃金の引き上げについて検討します。
そこで出た案を「地方最低賃金審議会」に提案し、話し合って最終的な各都道府県の労働局長が最低賃金を決定します。
毎年7月末頃に提案内容が決定、10月1日から新しい最低賃金の適用となります。

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最低賃金が過去最高に引き上げられた背景とは?

毎年見直される最低賃金ですが、2022年はなぜ過去最高となる引き上げとなったのでしょうか?
実は2021年も3.1%、28円という過去最高の引き上げだったのです。2022年はそれを上回る31円の引き上げとなり、2年連続の過去最高引き上げとなりました。

背景には、まず2020年からの新型コロナウイルスの影響があります。2022年は円安をはじめとした物価の上昇が相次ぎ、段階的に生活必需品の多くが値上げされています。
今後も電気やガスなどインフラの値上がりが予想され、給料が上がらないのに物価ばかりが上がれば、生活は苦しくなるばかりです。

そこで、働く人の負担を少しでも減らそうと、最低賃金が大きく引き上げられました。
企業は従業員への給与が最低賃金を上回っているかを確認し、働く人も自分の給料にどのように反映されているのか知っておく必要があります。

最低賃金、月給制や日給制はどうなる?計算方法は?

最低賃金は時給でいくら上がると言っていますが、もちろん月給制や日給制など、ほかの給料体系で働いている人でも最低賃金は上がります。それぞれの計算方法を紹介します。

月給制の場合

月給制の場合、基本給のほかに各種手当や給与中に入っています。手当には、最低賃金の対象とならない賃金があるため、除外される賃金を給与から差し引いた額を、労働時間で割ります。
除外される賃金は、通勤手当・時間外手当なので、給与合計から引いた金額で計算してください。

【月給制の換算方法の例】

  • 基本給 18,0000円
  • 職務手当 30,000円
  • 通勤手当  5,000円
  • 時間外手当 35,000円
  • 給与合計 250,000円
  • 労働時間/日 8時間
  • 年間労働日数 250日
  • 東京都の最低賃金 1,072円

●250,000円-(5,000円+35,000円)=210,000円
●(210,000円×12ヶ月)÷(250日×8時間)=1,260円

給与合計から通勤手当と時間外手当を引いた金額を出し、年間の給与を働いた時間で割ると1,260円になります。これは東京都の最低賃金1,072円を上回っているので、問題ないということになります。

日給制の場合

日給制の場合には、以下の計算式で計算してみてください。

●日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金の方が適用される場合には、「日給≧最低賃金額(日額)」となります。

歩合制の場合

出来高払いや請負制によって賃金が支払われている場合には、賃金の総額をその賃金の計算期間に労働した総労働時間数で割り、時間当たりの金額に換算してから最低賃金と比較します。

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最低賃金引き上げで企業がすべき対策は?

働く人にとっては最低賃金の引き上げは嬉しいことですが、企業にとっては場合によっては給与を引き上げなければならないため、対策が必要です。

最低賃金引き上げのために必要な対策

最低賃金に限ったことではありませんが、企業としては常に支払ったコスト以上の成果を従業員に生み出してもらうことが重要です。投入した労力や資源に対し、どれくらい成果が生み出せるかという「生産性の向上」への対策をしなくてはなりません。
生産性向上には、以下の2つの方向性があります。

  • 提供するサービスの価値を上げる(売上の向上)
  • 時間や工程を短縮する(コスト削減)

売上を上げて付加価値を向上させ、コスト削減によって効率が上がれば、必然的に利益が上がります。生産性を向上させれば、最低賃金対策だけでなく、企業が生き残るためにも必要な対策と言えるでしょう。

最低賃金引き上げに有効な補助金・助成金

企業の生産性向上を支援するために、政府はさまざまな支援策を講じています。その中には、最低賃金引き上げにも使えるものがあるので紹介します。

【経済産業省・中小企業生産性革命推進事業】
複数年にわたる中小企業の生産性向上を継続的に支援するため、以下のような支援を行っています。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 持続化補助金

設備投資やIT導入、販路開拓などの支援となっています。詳細は経済産業省のHPをご覧ください。

最低賃金の高い都道府県・低い都道府県は?

最低賃金が30円上がれば、月額で約5,000円、年間で約60,000円も給料に差が出ます。地域によって最低賃金が異なるため、1番高いところと低いところでは、どの程度の違いがあるのか比較してみましょう。

【最低賃金が高い都道府県 ベスト10】

  • 1位 東京 1,072円
  • 2位 神奈川 1,071円
  • 3位 大阪 1,023円
  • 4位 埼玉 987円
  • 5位 愛知 986円
  • 6位 千葉 984円
  • 7位 京都 968円
  • 8位 兵庫 960円
  • 9位 静岡 944円
  • 10位 三重 933円

なお、最低賃金額が最も低いのは853円で、10の県が該当します。該当するのは、青森・秋田・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄です。

最低賃金が最も高い東京と比較すると、時給が219円も違うことになります。ただし、最低賃金が高い地域は物価も高いので、一概にどちらの生活が楽とは言えません。
職場の時給や基本給が何年も上がっていないようなら、最低賃金を上回っているかどうかの確認だけはしておきましょう。

まとめ

最低賃金が過去最高に引き上げられる理由には、円安や物価の上昇が大きく関わっていました。企業は生産性向上の対策を、働く人は最低賃金を上回った給与が支払われているかの確認が必要です。
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