「有給休暇を毎年全部消化しきれていない」「退職までに使い切れない」という人は、有給休暇は買い取ってもらえないのか考えますよね。
有給休暇とは一定の条件を満たす労働者に、与えなければならない「一定の給料をもらえる休み」のこと。その権利を使わずに終わるのはもったいないという人のために、今回は有給休暇の買取ができるのかどうか、また買取が認められるケースはどのような場合があるのかについて解説します。
自分の勤務先ではどうなっているのか確認して、有意義に有給休暇を使いましょう!



有給休暇の買取は原則禁止!

有給休暇は、フルタイムの社員でもパート・アルバイト従業員でも一定の条件を満たせば付与することが義務づけられています。
その条件とは、以下の通りです。

  • 雇用日から起算して6ヶ月以上継続勤務している
  • 上記6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤している

有給休暇の買取は、法律で原則的に禁止とされています。なぜなら、有給休暇の買取を認めると、雇用側が「お金を払うかわりに休みを取らせない」という手段で従業員を働かせる恐れがあるからです。
有給休暇の趣旨は、「健康的で文化的な生活のために労働者に認められる権利」なので、有給休暇の買取はこれに反することになってしまいます。
有給休暇を与えることは法律で義務となっていますので、原則的に有給休暇を買い取るのは禁止なのです。

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有給休暇の買取が認められることがある?

有給休暇の買取は原則禁止ではありますが、例外的に買取が認められる場合があります。3つのケースを紹介します。

①退職時点で消化していない場合

転職や家庭の事情などで退職する場合、退職する時点で有給休暇が残っている場合があります。通常、退職までに有給休暇が残っていれば「有休消化」などという名目で退職日より早く休みに入ります。
しかし、引継ぎなどの事情で退職日までに有給休暇を消化できない場合、従業員が買取を希望すれば、会社は買取に応じることができます。
これは、従業員が退職してしまえば残っている有給休暇を使えなくなるため、趣旨に反しないと判断されます。

②有給休暇の取得から2年経過して時効消滅した場合

有給休暇は取得後2年で消滅することをご存知でしたか?労働基準法にもこのことは「時効消滅」として示されており、この時効消滅した有給休暇を会社が買い取ることができます。
実際には従業員は有給休暇を使っておらず、すでに消滅してしまったため、買い取っても“従業員を休ませる”という趣旨に反していないためです。
2年経過して消滅してしまった有給休暇がある場合は、会社に申し出てみましょう。

③会社が定める特別休暇の有給休暇の場合

会社が定める特別休暇とは、法律上必ず付与しなければならない有給休暇や育児休暇などのほかに、会社が就業規則などに基づいて任意に与える休暇のことです。
例えば、慶弔休暇、夏季休暇や年末年始休暇、リフレッシュ休暇などが特別休暇に当たります。
特別休暇が有給の休暇となっている場合には、会社に買い取ってもらっても問題ありません。元々が法定外の有給休暇であり、法律上の義務である有給休暇を取得したかどうかに影響がないためです。

しかしながら、会社によっては特別休暇が無給の休暇である場合もあるため、この場合は買い取ることができません。会社の規定がどのようになっているか確認してみましょう。

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有給休暇の買取価格はどのように計算するの?

有給休暇の買取は原則禁止されているため、法律上で買取金額の決まりはありません。一般的には、以下の3つの方法で買取価格を算出します。就業先がどの計算方法を採用しているかは、就業規則で確認しましょう。

【平均賃金】
過去3ヶ月の賃金から1日あたりの平均賃金を計算します。

【通常賃金】
所定労働時間働いたときと同じ賃金となります。時給の場合は、時給額に所定労働時間数をかけます。月給制の場合は、月の所定労働日数で割ります。

【標準報酬月額の日割り額】
標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金の保険料額を決定する場合に用いる月額賃金のこと。原則として1年間同じ額となります。

会社が有給休暇を買い取るメリット

原則的に禁止されている有給休暇の買取を、会社側が行うのにはメリットがあるからです。どのようなメリットがあるかを知っておきましょう。

社会保険料が減らせる

従業員の自己都合による退職が決定し、有休消化に入ったとしても、在職中の扱いになります。従業員が在職中であれば会社は社会保険料を負担しなければならず、その金額が多い場合は、有給休暇を買い取って退職日を早めようとすることもあります。
ただし、買取価格はあらかじめ就業規則で定めておかなければならないので、会社の都合のよいように買取価格を操作することはできません。

トラブルを回避したい

退職する従業員の未消化有給休暇が40日以上ある場合など、退職までにすべての有給休暇を消化できないことがあります。前述した有給休暇を買取できるケースにあたりますが、この場合に買取を拒否すると、従業員としての権利に反するのでトラブルに発展することも。
円満退職となるためにも、未消化日数が多い場合は買取に応じることが多いようです。

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有給休暇の買取に関するトラブル事例と対処法

有給休暇の買取においては、トラブルもあるようです。よくある事例と対処法を紹介します。

有給休暇が買い取ってもらえると知らなかった

退職するときになって、未消化の有給休暇が買い取ってもらえることを知らなかったということがあります。気づいたときには、すでに退職日までに有給休暇をすべて消化できないといった場合もあるため、就業規則はしっかり確認しておきましょう。

退職日を決める際に、退職日までに未消化の有給休暇をすべて消化することができないとわかった上で合意してしまったら、退職日を有休消化まで延長できなかったり、買取ができなかったりしますので、注意しましょう。

買取金額が低い

有給休暇を買い取ってもらうことになったとしても、その金額でトラブルになることがあります。法律では買取金額の定めがないため、企業は自社基準によって買取金額を決定できます。

特にトラブルになるのは、買取金額が有給休暇を消化する際の金額より低い場合です。会社がどの計算方法を採用するかは、就業規則に記載しておかなければならないので、間違いがないか確認してみましょう。

有給休暇の買取はすべての会社で行われているわけではない

ここまで有給休暇の買取について述べてきましたが、すべての会社が買取を行っているわけではありません。
自社が買取を行っているかどうかは、就業規則で確認してみましょう。
買取を行っていない場合は、有給休暇をすべて消化できるように退職日を決定するか、上司に相談してみることをおすすめします。

まとめ

有給休暇は、原則として買い取ってもらえません。ただし、買取が認められる場合があるので、自分がそれに当てはまるか就業規則やこの記事を参考に確認してみましょう。トラブルに発展しないよう、正しく知っておくことが大切です。

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