「リスキリング」という言葉をよく耳にするようになりました。日本語では「学びなおし」と呼ばれており、さまざまな社会情勢によって、国も企業もリスキリングを推進しています。
急速なITやAIの発達により、不要な仕事が増えるとも叫ばれている中、リスキリングが注目されている理由やメリットを解説します。
また企業が導入する方法も紹介していますので、参考にしてみてください。



リスキリングとは?

まずはリスキリングとは何か、リカレントやOJTとの違いも把握しておきましょう。

リスキリングとは「再教育」「学びなおし」

リスキリングは英語の「re-skilling」のことで、スキル(能力)の向上を繰り返すという意味から、再教育・学びなおしのことを指します。
2020年にダボス会議で「リスキリング革命」が発表されたことで、日本でも話題となり、流行語大賞にもノミネートされました。
リスキリングの大きな特徴は、働きながら学ぶということであり、多くの企業でも導入や導入の検討をしています。

リカレント・OJTとの違い

リカレントには繰り返す・循環するという意味があるため「リカレント教育」はリスキリングと似ています。しかしリカレントは業務を離れて大学など教育機関に入り直して学ぶことを指すため、働きながら学ぶリスキリングとは異なります。

また新入社員育成に多くの企業が取り入れているOJTは「On The Job Training」の略で、先輩が後輩に仕事を通じて業務やスキルを教える手法です。新入社員は学びなおすのではなく新しいことを学んでいるため、リスキリングとは明確に異なります。

リスキリングはなぜ注目されているのか?

現在リスキリングはなぜ注目されているのでしょうか。その背景を知っておくと、リスキリングの重要性が見えてきます。

DXの推進+デジタル人材の不足

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、社内のデジタル化を推進する取り組みです。ITやAIを活用しながら業務の効率化やサービスの向上などを目指すもので、実現すれば企業にとって大きなメリットとなるでしょう。

しかしながらDX化を推進するには、コンピュータをはじめデジタル関連の知識が必須です。飛躍的にDX化が進めばデジタル人材の不足が予測されるため、エンジニア以外でもITスキルを身につける必要が出てきました。
そのため企業では特にIT関連のリスキリングに注目しています。

政府の支援

2020年にダボス会議でリスキリング革命が発表され、日本でも2022年にリスキリング支援を総合政策に盛り込む考えを表明しました。世界中でリスキリング推進の動向があり、日本においても働く人のスキルアップが日本の企業や経済を活性化すると考えられています。

経済産業省や厚生労働省でも助成金や支援事業などを行っており、各企業においてもリスキリングはますます活発になると予想されます。

新型コロナウイルスの影響

2020年、ダボス会議と時を同じくして新型コロナウイルスが世界中で大流行しました。そのため多くの企業でテレワークが導入され、働き方が大きく変化。コロナ後もオンラインでのやり取りは継続されており、働き方の選択肢が広がりました。

オンラインを駆使することで、時間的にも距離的にもスピードアップしてコスト削減にもなりましたが、対面が減ったため新たなスキルの必要性も出てきました。そのため新たなスキルの獲得ができるリスキリングが注目されています。

リスキリングのメリット

リスキリングは新たにスキルを習得できるため、個人の能力がアップするのは間違いありません。それ以外のメリットについて考えてみましょう。

業務の効率化

リスキリングでスキルを習得すれば、DX化も推進でき業務の効率化も期待できます。その結果、社員のスキルが高まる上に多様化し、組織全体の能力がアップします。新しいアイデアが生まれ、イノベーションを生み出すきっかけにもなるでしょう。

また業務がスピードアップして残業もなくなり、企業としてのコスト削減だけでなく、社員のワークライフバランスもとりやすくなります。

市場価値の向上

2022年に公開されたChatGTPは、多くの人を驚かせました。生成AIがここまで進化したことで、人が行っていた仕事の一部がAIに置き換えられ、人の仕事の方向性も変化しています。

AIの進歩の一方で、コミュニケーションスキルや創造性、思考力など、まだAIでは難しい分野もあります。このような分野を伸ばすようなリスキリングを行うことで、市場価値の向上が図れるでしょう。

社内新旧文化の融合

社内の既存事業に深い理解のある社員にリスキリングを実施することで、獲得したスキルを社内にどのように還元すれば良いかわかりやすくなります。また新しいスキルを取り入れるのみならず、既存の事業にどのように応用していくかという課題をうまく融合させることができます。

社員にスキルアップの機会を提供すれば、満足度もあがり離職の抑制や、将来的に優秀な人材を確保することにも繋がります。

リスキリングを導入するには?

メリットが大きく将来性もあるリスキリング。導入する方法を解説します。

現状を把握し、目標を定める

まずは自社の現状をそのまま把握し、課題を分析しましょう。課題が見えていないとリスキリングで何を学ぶべきなのかがぼやけてしまい、リスキリングが無駄になりかねません。
課題をクリアするための業務の難易度、必要な人員、規模などを検討して方向性を決定します。未来の予測は変化することもあるため、不透明な部分があるのは仕方ないにしても、抽象的な目標ではなく、明確な目標を定めましょう。

またリスキリングを実施したい対象者が、リスキリングに前向きでなければ成果が出にくくなります。対象者にリスキリングの目的や意図を理解してもらい、納得して学びたいという意欲を持ってもらうためにも、現状の把握と明確な目標設定が大切です。

リスキリングプログラムを作る

目的と目標を定めたら、何をどのように学べば効果的なリスキリングとなるかを考えていきます。手段としては社内研修やビジネススクール、オンライン学習など、さまざまなものがあります。

自社での実施が難しければ、外部講師の招聘や研修の委託なども検討してみましょう。
短期だけでなく中長期的に学べるよう、複数のプログラムを準備する企業も多くなっています。

リスキリングの実施

プログラムを作ったら実際に社員に取り組んでもらいます。誰がリスキリングに取り組むかは、個人面談などで希望をヒアリングするなどして定期的にフィードバックしながら進めます。

またリスキリングを行っている社員に負担とならないよう、業務とのバランスを考慮することも重要です。注意深く観察しながら、慎重に取り組んでいきましょう。

習得したスキルを活用する

リスキリングでスキルを獲得したら、実務で活用しましょう。リスキリングを行った社員を、スキルを活かせる部署へ就かせたり、実務で活用できる場を用意したりすることで、フィードバックも可能となります。

学びを実践することで評価や改善点が見えてくるので、改善によりさらなる向上が見込めます。

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まとめ

企業がリスキリングを行うことは、社員のスキル向上だけでなく、業務の効率化や市場価値アップ、将来的な優秀な人材の確保まで見込めるメリットがあります。
ITやAIの進歩によって大きく世の中が変化する今、世界中が注目しているリスキリングの導入を検討してみませんか!