採用活動では、企業側も多くの応募者とコンタクトを取ったり会ったりします。しかし、応募者が「この会社を受けて良かった」と思っているかどうか、気にしたことはあるでしょうか?
今回は、採用において昨今注目されている「採用CX」という概念について解説します。どのような考え方なのか、注目される背景には何があるのかを把握し、採用CXを取り入れるメリットやその方法を説明していきます。
これまでの採用がうまく行かなくなったと感じているなら、1度何をすべきか考えてみてはいかがでしょうか。



採用CXとは?

採用CXは「Candidate Experience」の略で、直訳すると「応募者(候補者)体験」という意味です。今や採用は企業が求職者を選ぶ時代から、求職者が企業を選ぶ時代へ変わりつつあります。
企業が選ばれる立場になったために必要な、採用力の向上とファン獲得を目的とした体験を設計することを、採用CXと呼んでいます。

求職者が企業を認知してから選考終了まで、それぞれのタッチポイントに価値を提供し、採用の合否に関わらず「この企業を受けて良かった」と感じてもらえることが第一の目標と言えます。

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なぜ今、採用CXが注目される?

採用CXが注目を浴びている背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

人手不足により人材獲得競争が激化

長年の我が国の懸念事項である少子高齢化に伴い、労働人口も減少しています。総務省統計局の調査によると、2021年11月分の就業者数は6650万人で、前年同月より57万人減少しており、3ヶ月連続の減少。出生数も減少しているため、日本の総人口に占める生産年齢人口(15歳〜64歳まで)を60%とすると、1年間に30万人を越える労働人口が減少していることになります。
このまま労働力不足は深刻化すると予測され、少ない労働力を企業が奪い合う状況が続くことになるでしょう。

参照元:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)11月分」

終身雇用制の崩壊による流動的な雇用

日本企業の特徴でもあった「終身雇用制」が成り立たなくなり、転職が当たり前の時代になりました。転職市場は活発化し、人材の流動性が高まっている中で、これまで人材獲得に苦労したことのない企業までもが採用活動に力を入れなければならない事態となっています。
求職者に選ばれるためには、採用CXに取り組む必要が出てきました。

SNSの普及による情報の透明性

就活や転職もインターネットで行う時代。従業員による口コミサイトや、SNSなどで企業の選考情報が流されることも多くなりました。これまでは受けた人にしかわからなかった情報も透明化され、よりリアルな情報が多くの人に届きます。
ここで悪い情報が拡散されると、企業にとってのダメージは計り知れません。採用CXによって応募者への印象を高めることが課題となります。

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採用CXのメリット

採用CXに取り組むべき背景がわかったところで、採用CXを行うメリットについて見てみましょう。

応募者による良い口コミ拡散

応募者が「良い体験をした」と思ってくれることで、SNSやブログなどで就活の情報を発信する可能性があります。実際に体験した人の口コミは、リアルな体験として貴重な情報でもあり、良い口コミを流してくれれば企業にとってはこれ以上ない広報活動になると言えるでしょう。

リピーターの獲得

この場合のリピーターとは、主に応募者が周囲の人に受けた会社を紹介することを指しています。もちろん、応募者自身が別の機会にまた応募することも含みます。
応募者が選考を受ける体験で価値があると判断すれば、リピーターを獲得できるチャンスがあり、短期的・長期的に潜在的な応募者を増やすことができます。

企業のイメージアップ

採用CXが成功すると、応募者の企業に対する印象は良くなっており、良いイメージを抱いて入社します。すると、企業に対する信頼度や愛着が高いまま従業員となり、いずれ成長して活躍する可能性も高くなります。
優秀な社員が在籍する企業は、自然と顧客満足度も高く、業績も伸びるため、社員への利益還元も促されて良い循環が生まれます。これらを総合して企業としてのブランド力も上がり、付加価値が生まれてイメージアップへと繋がります。

ミスマッチを防ぎ定着率をアップ

早期退職の主な原因は、入社前と入社後のギャップです。当然ですがこのギャップは「こんなはずじゃなかった」「期待外れ」というマイナス面でのものがほとんど。
しかし、採用CXによって応募から選考までの各フェーズで、コミュニケーションや情報開示による良い応募者体験をしていれば、ミスマッチを防ぐだけでなく、定着率もアップする期待ができます。

採用CXを取り入れる・改善の方法

それでは実際に採用CXを取り入れる方法、すでに取り入れている場合には改善の方法を紹介します。タッチポイント(接点)を整理しながら見ていきましょう。

採用CXの取り入れ方

採用CXは「認知・応募・選考・内定入社」の4つのフェーズで構成されています。各フェーズで応募者に良い体験を提供するには、タッチポイントを洗い出すことからはじめてみましょう。それぞれのタッチポイント例を紹介するので、自社の場合はどこに焦点を当てれば良いのか考えます。

①「認知」のタッチポイント例

  • 求人票
  • コーポレートサイト
  • Webメディア
  • 採用サイト
  • プレスリリース
  • SNS
  • イベント・交流会
  • YouTube
  • 社員インタビュー記事 など

これらのタッチポイントにおいて、まずは自社を知ってもらうとともに、「楽しそうな仕事だな」「社内の雰囲気が良さそうだな」など好印象を持ってもらえるよう工夫をします。

②「応募」のタッチポイント例

  • 求人票
  • スカウトメール
  • 人材紹介
  • 紹介(リファラル)
  • SNSのDM
  • 応募フォーム
  • インターンシップ
  • 採用担当者からの連絡 など

求職者は、求人サイトやコーポレートサイトなどを利用して複数の企業に応募するのが一般的です。実際のコンタクトを取り合うのもこのフェースから。複数の企業の中から好印象を持ってもらうには、スピーディな対応や的確なコミュニケーションが大切です。

③「選考」のタッチポイント例

  • 受付での対応
  • オフィスの雰囲気
  • 社員の挨拶や対応、身だしなみ
  • 採用ピッチ資料
  • 面接時のアイスブレイク
  • 面接官の雰囲気や質問内容
  • 求職者からの質問への回答
  • Web面接 など

面接は初めてお互いが顔を合わせてのコミュニケーションの場となることが多く、第一印象が大きなカギを握ります。面接では、面接の時だけでなく社内に入った瞬間からすべてが重要なタッチポイントです。応募者に寄り添い、誠実に向き合うことを大切にしましょう。
また、選考の迅速さもポイントとなります。複数の企業に応募しているため、早く内定が出た方に良い印象を抱きやすくなります。

④「内定入社」のタッチポイント例

  • 内定通知
  • 条件交渉
  • 内定者フォロー
  • 会社見学
  • 社内イベントへの参加
  • 懇親会
  • 入社前研修 など

優秀な人材は、複数の企業から内定をもらっていることもあります。内定を出しても入社してくれるとは限らないため、内定後のフォローやケアも大切なタッチポイントとなります。

採用CXの改善

採用CXを取り入れているけれど、うまく行っていない場合は、以下の2つの点を見直してみましょう。

①結果の通知が遅くなっていないか?

応募者は連絡が遅いと、不安になったり、信用できないと感じたりする傾向にあります。「返信が遅い=いい加減な会社」という印象となり、採用CXで良い体験を提供できていないということになります。
できる限りスピーディな対応ができるよう、改善してみましょう。

②採用業務の工数が多い

採用業務の工数が多いために迅速な対応ができなかったり、応募者に向き合う時間を確保できていなかったりしていませんか?採用の業務のスピードアップを図るには、採用管理システムの導入も検討してみましょう。
採用管理システムを導入すると、情報を一元管理できて時間短縮になり、担当者間の情報共有や連携もスムーズに。またデータも蓄積できるため、採用ノウハウも貯まって採用CXの改善へと繋がります。

まとめ

採用CXは、労働人口減少にある日本において、企業として取り組むべき課題です。まずは「この企業を受けて良かった」と感じてもらうために何が必要か考えてみましょう。人材獲得の競争に勝つためにも、採用CXへの取り組みは大切ですね。

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