転職を思い立ったとして、何から考え始めればいいだろうか。国内の上場企業は約3500社で、就職情報サイトには約1万社が掲載されている。また、2015年版中小企業白書によると小規模事業者を含む中小企業は385万社以上に上る。片っ端から調べるのは現実的に不可能だ。

まずは自分の「転職のための基準」を決めることが肝要である。勤務地、業種、給与、労働時間、やりがい、トップの人柄、経営理念、独自技術の有無、業績や将来性、CSRやCSVといった社会への貢献度など、企業には様々な要素がある。まずは「どうしても譲れないもの」から考えてみる。

たとえば「IT企業でがんがん働くのは問題ないので、お金はしっかりほしい」ならば「業界の中でも給与が高い会社」を基準に探せばいい。この場合、労働時間や休日はそれほど重要視されないだろう。一方で「ライフスタイルの中でサーフィンが重要」ならば、「勤務地は海の近くで、休みが確実にとれる会社」が譲れない基準になるだろう。このように明確な基準が決まれば、一気に転職先の企業を絞り込める。

ランキングを利用しつつ中小企業にも目配りを

なかなか基準が決まらないとしたら、メディアが作ったランキングを参考にするのも有効だ。Vorkersの『働きがいのある企業ランキング』など就職や転職に関連する企業が独自にまとめたランキングはチェックしておきたいところ。また、東洋経済オンラインでは『転職者を多く受け入れているトップ500社』など『会社四季報』の情報を利用した様々な企業ランキングが紹介されている。こうした調査項目も転職のための基準作りの参考になるだろう。

ただし、ランキングを重視しすぎると、どうしても大企業に偏ってしまう傾向がある。当然ながら、中堅・中小企業の中には知名度こそ低いものの優良な企業は多く、そこに目を向けないのはもったいない。自分の基準を明確に絞り込んでいけば、価値観に合った中堅・中小企業が見つかる可能性はぐっと高まる。

さらに言えば、その企業が求人を出していなくても、アタックしてみる価値がある。志望動機を明確に表現できれば、予定外の採用につながることも少なくないからだ。人生を大きく左右する決断となる転職。その準備は自らの労働観、経済観念、人生観、価値観を見直すよいきっかけになる。まずはオリジナルの基準作りに全力を注いではいかがだろうか。