求人票でもよく見かける「試用期間」。
企業によって試用期間の有無や期間なども異なりますが、入社後にトラブルにならないよう、試用期間について知っておきたいことがあります。
今回は、試用期間とはどのようなものか、注意点やよくあるトラブルを紹介します。正しい試用期間について理解しておきましょう。



試用期間はどんな期間?

試用期間とは何のための期間なのか、長さや給与、待遇などについて説明します。

試用期間とは

試用期間は「テスト期間」や「見習い期間」とも呼ばれ、採用した社員の適性や能力を見極めるために、企業が設ける期間のことです。面接だけでは社員のすべてを見抜けないため、入社後の試用期間によって的確な判断をするために企業が行います。
言い換えれば、仮採用のようなものですが、あくまでも入社しているという状態になります。

試用期間の長さ

一般的には1〜6ヶ月程度ですが、1年以上に設定することはできません。ただし、試用期間中に欠勤が多いなどの理由で、社員の能力への判断が難しい場合には、試用期間の延長をできることがあります。

試用期間中の待遇

試用期間は仮採用とは言っても、企業と社員の間には正式に労働契約が結ばれている状態です。そのため、試用期間中であっても正社員と同じ待遇が受けられます。
雇用保険、健康保険などの各種社会保険への加入や、給与、残業代、各種手当や福利厚生、有給休暇も正社員と同様となります。

試用期間中の給与

試用期間中の給与は、本採用時より低く設定されている場合があります。そのためには、企業は賃金の条件について就業規則や労働条件通知書に明記し、社員に合意してもらう必要があります。

就業規則や労働条件通知書に条件が記載されていなかったり、事前に説明がなく、社員も合意していなかったりする場合には違法となるので注意しましょう。
また試用期間中であっても「週40時間、1日8時間」の法定労働時間を超えた場合には、残業代を支払わなければなりません。給与明細でしっかり確認しましょう。

試用期間と研修期間の違い

研修期間とは、社員がその仕事に必要な知識や技術を習得するために設けられる期間のこと。研修のやり方は企業や業種によってさまざまですが、業務の習得を目的としています。

一方、試用期間は社員の適性を見極める期間なので、何かを習得するための期間ではありません。
ただ新入社員の場合は、試用期間と研修期間を同じ長さで同時期に設定されている企業もよく見受けられます。適性を見ながら、業務の習得もするという期間となり、待遇は正社員と同じです。

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試用期間に関するよくあるトラブル

試用期間についての誤解や勘違いによって、よくあるトラブルを紹介します。企業側も求職者側も、注意してほしいポイントです。

試用期間中に解雇された!

企業が労働者を解雇する場合、労働基準法によって厳しい制限が設けられています。試用期間中だからといって、企業が一方的に解雇することはできません。
しかし、採用した人が遅刻や欠勤が多い、不適切な言動が多いなど著しく適性に欠けると判断される場合は、企業が本採用の可否を決定できます。
その場合は「解約権留保付労働契約」の「留保解約権の行使」によって労働契約が解除されます。

労働者からすると、試用期間中に企業から不適格と判断されると、事実上の解雇になるということです。
ただし解雇の正当な理由として「合理的・客観的・社会通念上やむを得ない理由」が求められます。試用期間であっても正社員ですので、企業は何の次善策もとらず、単に合わないというだけで解雇することはできません。

試用期間中に退職したい!

企業が勝手に解雇できないように、労働者も試用期間中に簡単に退職はできません。どうしても合わない、辞めたい、または健康上の理由や家族の都合などでやむを得ず退職したいという場合には、通常会社を退職するときと同じように、正式な手続きを行わなければなりません。

試用期間であっても労働契約は成立しており、正社員となっている訳ですから、退職したい意思は2週間前までに伝えましょう。企業によっては1ヶ月前までなど就業規則に定められているため、会社のルールに則った告知期限を守ってください。

また試用期間の退職でも、履歴書には職歴として記載するのが一般的。記載しないと空白期間として次の就職活動に不利になることもあります。

試用期間を延長したい

設定している試用期間中に、社員の能力や適性の判断がつきかねることもあります。特に、試用期間中に病気やけがなどで長期間欠勤した場合などは、適性を判断する材料が十分にありません。

また遅刻や欠勤が多く、勤務態度に問題があるけれど、解約留保権を行使するまでには至らない場合には、試用期間を延長してもう少し様子を見ることも可能。

試用期間の延長には、合理的・客観的な理由があり、本人の合意を得る必要があります。就業規則に延長規定を定めておくとよいでしょう。

試用期間中に有給休暇をとりたい

有給休暇が付与されるには、6ヶ月間の継続勤務期間に全労働の80%以上出勤したという条件があります。ですから一般的な試用期間中には、有給休暇がとれる条件に達しないことがほとんどです。
ただし、試用期間が6ヶ月以上あり、継続勤務をしていて80%以上出勤している人は、有給休暇をとることができます。

企業側が注意しなければならないのは、有給休暇付与条件の「6ヶ月間の継続勤務期間」には、試用期間中も含まれるということ。本採用した日から数えるのではないため、覚えておきましょう。

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試用期間のメリット・デメリット

試用期間を設けるかどうかは、企業によって判断されます。試用期間を設定するメリットとデメリットを紹介します。

試用期間のメリット

企業にとって試用期間を設けることは、採用試験でわからなかった社員の適性を判断することができるメリットがあります。万が一採用時に想定していた能力に満たない、社会通念上から言動に問題があるなどがあれば、「留保解約権の行使」によって労働契約を解除することができます。

また、労働者にとっても面接時にはわからなかった実際の業務内容や社内の雰囲気などを知るよい機会となります。

試用期間のデメリット

試用期間には、社員も企業を見極めています。採用されたとはいえ、本当にこの会社でやっていけるのか、自分に向いている仕事なのかを確認しているのです。試用期間に実際に働いた結果、社員が退職の判断をすることもあります。

また、試用期間中は「解雇されるのでは?」といった不安もあるため、萎縮して本領が発揮できないこともあるでしょう。試用期間に給与が低い場合にも、モチベーションが上がらないといったデメリットがあります。複数の内定をもらっている人は、試用期間のない企業を選ぶことも。
中途採用では試用期間があると敬遠されるケースもあります。

まとめ

試用期間はあくまでも正社員として採用後に設けるテスト期間です。正式な雇用契約が結ばれているので、一方的に解雇したり、簡単に退職したりできないことを頭に入れておきましょう。
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